本ブログの考察で用いる、
記号論(Semiotics)について解説していきます。





この人物がどんな人か説明して下さい


ドラクエ9

さて、この人物はいったい誰でしょうか。

ゲームファンの方なら説明は不要でしょう。
『ドラゴンクエスト9』の主人公ですね。


では、あなたの友人が仮にゲームをしない人だったとして、
あなたはその友人に対して、

ドラクエ9の主人公

をどのように説明しますか?








  • 天使界に住む天使

  • 頭の光輪と背中の羽を失って地上に落ちた

  • 黄金の果実を口にして人間になった

  • 堕天使を討ち果たし世界を救った


こんな所でしょうか。




ですが、この説明だと誤って伝わる可能性が高い。


天使」という説明で、
大多数の人が思い浮かべるのが、


天使

こういうイメージだと思います。

『フランダースの犬』でネロを迎えに来た、
金髪で、ぷにっとした体つきの、可愛らしい姿として、
完璧に固定され、共有化された天使像です。

こういった固定観念のせいで、画像の人物からかけ離れた絵を、
相手に想像させてしまうに難くありません。


下手をすれば、「果実」という説明が邪魔をして、
西洋神話を思い浮かべる人が居るかも知れません。
救世主」という説明が後に続けば、
もう十中八九、誤解をされる事でしょう。




ドラクエ9

なので、今度は余計な説明を挟まずに、
あなたの友人に画像を見てもらい、

これはドラクエ9というゲームの主人公です

と端的に説明したとしましょう。






はたして友人に、画像の人物が
天使」である事が伝わるでしょうか?


これまた十中八九、伝わらないでしょう。






「天使」のイメージを利用する


相手に伝えたい対象を、


文字 で伝えようとすると、

ある一部分しか抜き出す事が出来ません。


映像 で伝えようとすると、

全体のイメージしか捉える事が出来ません。



氷山理論
 図:ヘミングウェイの「氷山理論」

小説や映画では、各々の媒体の欠点を克服する為に、
伝えたい対象を別の何かに置き換え、
それについて叙述したり、もしくは映写する事で、

わずかな描写から全体のイメージを類推させる、

不言不語の表現を生み出しました。


例えば、ヘミングウェイの短編小説、
『白い象のような山並み』では、white elephant が
「無用の物」を表す慣用句であると読者が知っていたら、
山並みの風景を白い象に例えた女性の、
本当の気持ちが解釈出来るようになっています。

文字と映像を使ったメディア媒体であれば、
マンガやアニメ、ゲームにも同じ技術が流用可能です。

こうした表現は90年代の半ばからサブカルチャーにも広まり、
今では当たり前になってきています。


天の箱舟

『ドラクエ9』では、シリーズ作品でお馴染み、
世界を救う「救世主」のお話を、
西洋神話に出てくる救世主に見立てて、
光と闇が混在する世界観を表現しています。

何せこのシリーズ、主人公がしゃべらないので、
不言のロジックがぴたりとハマる。


主人公を神の国に導く案内人として登場する、
天の箱舟の運転士・アギロを、

聖なる心(Holy Spirit)のアギロゴス、

と呼んでいる事から、Holy Spirit が
キリスト教の教義の「聖霊」の事だと知っていれば、
星のオーラを載せて天へと還るシーンが、
神による預言成就を指していると解釈出来ます。


救世主

ドラクエシリーズでは伝統的に、
主人公が世界の救世主になりました、

おしまい。

というストーリーになります。


これでは毎回ありきたりになってしまうので、
『9』のストーリーでは誰もが容易に思い浮かべるであろう、

天使」に対する固定されたイメージを利用し、

キリスト教の預言成就を連想させるシーンを挟む事で、

主人公が「救世主」であると一言の説明も無しに、
プレイヤーに類推させているのです。


天使」は主人公を参照する一部分であり、
全体のイメージを類推させるカギです。

従って、『ドラクエ9』の主人公を説明するなら、
救世主」として説明する方が、
この人物を象徴する言葉として相応しいと言えます。


記号論
 図:パースの三項関係

このように、相手に伝えたい対象(object)を
分かりやすい記号(sign)に置き換える事を記号化と言います。

置き換えられた記号から類推し、
相手の伝えたい事を解釈(interpretation)するのが、
このブログで扱っている記号論です。



あなたの感じた事は、正しくないかも知れない


中の人は昔、ソフトボールをやっていました。

俊足を活かした「スラップ打法(走り打ち)
(千葉ロッテのロエル・サントス選手の打ち方)を得意とし、
高打率を残せていたので、これが自分の武器だと思っていました。

ところが、コーチから体幹強化を勧められ、
それに8か月間取り組んだ結果、

実は私が高打率を残せていたのは、
スラップを使い分ける動体視力に優れていたからであり、
必要な筋肉を付けて通常の打法に戻す事で、
ボールを見極める目と、しっかり振り切るスイングが噛み合い、
長距離バッターへと生まれ変わりました。

「スラップが得意」は私の思い込み。
客観的に見ていたコーチの方が正しかったのです。


主観と客観


あなたの認識は、必ずしも正しいとは限りません。

送り手が表現に対して記号化を施している場合、
受け手が感じた事は、氷山の一角に過ぎないかも知れません。
平易な表現に落とし込まれているほど、
受け手は理解した「つもり」になりがちです。

マンガ、アニメ、ゲーム等でも、
記号化された表現が当たり前になってきています。

無造作に置かれた台詞や映像の中から、
送り手の真意を正確に読み解く技術が、
受け手に求められています。


このブログでは、マンガ、アニメ、ゲーム等を
総合文化研究の遡上に載せ、
小説や映画と同じ手法をもって考察していきます。

皆様の理解の一助になれば、幸いです。



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