鎧の孤島


ポケモン剣盾DLC第1弾、『鎧の孤島』。

以前の考察では、アイルランド島かマン島ではないか?
と予測しておりましたが、ポケモンUKから
マン島モチーフであると公式に発表されました。










で、その考察では第2弾の冠の雪原に比重を置いていた為、
ダクマとの修行編は正直スルー案件だったのですが、
全然そんな事は無かった

まさかここまでのネタを仕込んでくるとは、
流石はゲーフリ様、勝手に天井を決めた私が浅はかでした。



今回は、鎧の孤島から解読できたネタの数々を、
詳細に見ていく事にしましょう。






6月17日はケルト夏至祭ウィーク




まず触れておかなければならないのは、
鎧の孤島のアップデートが行われた6月17日が、
マン島を含むケルト6国の夏至祭の週である点です。

ケルト夏至祭はケルト復興運動によって80年代以降に復活した祭りで、
イギリスで流行したキリスト教以外の文化を見直す、
復興異教主義(ネオペイガニズム)と深く関係しています。


夏至当日は6月21日ですが、キリスト教の夏至祭は
冬至を祝うキリスト生誕祭と同様に、
3日遅れの6月24日(聖ヨハネの日)に祝います。
祝祭期間は20日から26日までの間です。

これに対しケルト夏至祭は本来の6月21日に祝い、
各地で篝火を焚く風習が残されています。
この火祭りが、早い所では6月17日頃から始まります。

 20日 ミッドサマーイブ
 21  ミッドサマー(夏至祭)
 22
 23
 24  聖ヨハネの日(キリスト教の夏至祭)


キリスト教圏より1週間早くお祭りを開くのは
ペイガンないしネオペイガンを自称する人達にとって重要な事。


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わざわざ夏至の季節に追加DLCのアプデをぶつけてきたのは、
剣盾本編で「冬至」を扱ったからに他ならないでしょう。

ブラックナイトは英語版では「the Darkest Day(冬至)」と訳され、
ムゲンダイナの復活をキリストの生誕に準えているのは、
既に以前の考察で触れた通りです。

追加DLCの舞台であるヨロイじま・カンムリ雪原は、
マン島・スコットランドといずれもケルト文化圏がモチーフであり、
ガラル地方の太古の王・バドレックスを中心に据えている事から
ムゲンダイナとの対立の構図が見え隠れします。


もし今後に予定されている冠の雪原のアプデ日が
ケルト最大のお祭り・ハロウィン(10月31日)の前後であったなら、
最初からケルトを示唆する狙いがあったと見て良さそうです。



徹底された「3」推し




アプデ前のツイート。

剣盾の追加DLCの舞台がケルト文化圏である事に狙いを付け、
ケルトの聖数である「3」にちなんだモノを探す目的で
ヨロイじまへと乗り込んだ私でしたが、


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マスター道場のおかみさんの名前は「ミツバ」。

三つ葉(シャムロック)はアイルランドの国花です。


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マスタードによる修行内容は「3つ」。


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修行に登場したヤドンは「3匹」。


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ダイスープに必要なダイキノコは「3個」。

探す必要がなかったくらい次々と見つかります。


これほどまでに「3」推しする意味はやはり、
ヨロイじまがマン島モチーフである事が関係しているでしょう。


トリスケルトリスケル


マン島のシンボルと言えばこれ。
ケルト紋様と呼ばれるトリスケル(三脚巴)です。

足のデザインの方は大河ドラマ『いだてん』でも採用されたので
ご存知の方も居ると思います。


ケルト神話の構成は基本的に3つで1組(Triad)です。

特にアイルランド神話においては、
ケルトの3鳥であるモリグナ3姉妹をはじめ、
同じ役割の神様が3人で1つの纏まりを持って行動していたり、
あるいは別々の役割を担う3人の女神が
全て同じブリギットという名前で呼ばれていたりと、
その傾向が顕著に表れています。

三脚巴の渦巻き紋様は、生・死・再生の3要素で構成された
輪廻転生の世界観をデザインしたもので、
マン島の海神である3本脚の神様、
マナナン・マクリルもアイルランド神話に属します。


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ヨロイじまのシナリオにおいても、
ドレディアのミツ、カジッチュのミツ、ビークインのミツ、
3つのミツを巡る構成になっていました。

まさに3ミツ


果たしてこれにどんな意味があったのか?

クマさんだからハチミツとかいう安直な発想でも、
3つとミツを掛けた単なる言葉遊びでもない事に注目してみます。



夏至の日に飲むハチミツ酒


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マスター道場のおかみさん・ミツバの英名は「Honey」。
そしてハチミツを巡るシナリオ。

はて、そう言えばケルト復興運動に携わっていた人が、
夏至のお祭りでハチミツ入りのお酒を飲んでいて、
うぇえ、それ美味しいんですか?と尋ねた記憶がありまして、
今回改めて確認を取ってみると、
やはりこれもケルト文化と関係していました。

マン島の海神・マナナンが暮らす常若の国(ティルナノーグ)には、
蜜酒が川のように流れ、若さを保つ不死の霊薬として用いられていたとあり、
ケルトの祭事にハチミツ酒が欠かせなかったそうです。

ハチミツがエール酒に取って代わられた後も、
お酒にハチミツを入れて飲む習慣は残り、
今でも土用の丑の日的な感覚で夏至の日に飲用するのだとか。


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ははぁ、ミツバ(Honey)さんとハチミツの組み合わせも、
どうやらケルトと夏至がルーツのようですね。


一方で、キノコはケルトと全然関係ないようで、
作家であり菌類学者でもあるR・G・ワッソンの著書によれば、
キノコ文化と宗教儀式に密接な結び付きがあるのは
スラヴ系民族(ウィッチャー3の魔術師さん達)であり、
マイコフォビア(キノコ嫌い)で知られるアングロサクソンはもちろん、
ケルト系民族も祭事にキノコを用いないとの事。

ケルトの人達にとってキノコは妖精の食べ物である為、
人間が口にはしないそうです(食べると妖精の世界に連れていかれる)。


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えっ。


大丈夫なの、マスター道場の人達…?

おかみさんは外から嫁いだ人だからセーフなのか。


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いずれにしろ、アプデ日を夏至に合わせてきた事、
そして夏至に纏わるケルトの習慣をシナリオに組み込んできた事から、
ヨロイじまでの修行編は

ブラックナイト(the Darkest Day=冬至)と関係している

と見るべきでしょう。


具体的には、災厄をもたらしたムゲンダイナを退けた事で、
かつてのガラルの統率者であったバドレックスが王座に復帰する、
その日が近いのかも知れません。


答えは、冠の雪原で明らかになると思います。