ウルトラサンムーンの発売を前に、
過去のポケモンシリーズをおさらいしておきます。

今回は、ブラックホワイトとXYです。

BW_XY





未来は予測不可能 『ブラック・ホワイト』


ブラックホワイト

ブラックホワイト以降から、二項対立の構図が
世界観だけでなく人物にも落とし込まれるようになり、
歴代ボスvs主人公となる形式で、
異なる二つのイデオロギーを争わせています。

無口な主人公に代わって主義主張を述べさせる為に、
アララギ博士等の同行者が旅先に頻繁に現れるようになったのも、
後期の増田作品の特徴です。


ブラックホワイト

ブラックホワイトでは、プラズマ団の王・Nが直線思考、
主人公サイドが水平思考を行い、
線形vs非線形のモデルに当てはめています。

 N
 多くの 価値観が 混じり合い
 世界は 灰色になっていく……
 ボクには それが 許せない

 ポケモンと 人間を 区分し
 白黒 はっきり わける

 そう これこそが ボクの 夢!
 かなえるべき 夢なんだ!


線形分離

数学の天才的頭脳を持つNには、
人間とポケモンの存在が、線形回帰の予測の上に乗る、
点集合に見えていると考えられます。

Nの予測が外れているほど分布が丸くなり、
正確であるほど直線になります。

人間=白、ポケモン=黒とする論理条件に従い、
白点集合W、黒点集合Bに分けて予測の精度を上げると、
次第に2本の直線になっていきます。

線形分離

Nはモンスターボールに閉じ込められたポケモンを、
人間の管理支配の下から解放し、
灰色に混じり合った世界を分離可能な領域までマージンを広げ、
白と黒に区分された世界の実現を試みます。


イッシュ地方のモデルとなったニューヨークは、
かつては多民族共栄都市として「人種の坩堝」と呼ばれていましたが、
その実態として民族の独自性を保つべく、
白人居住区と黒人居住区に区分を整理されている様子から、
人種のサラダボウル」と呼ばれるようになりました。

Nの台詞は、まさにニューヨークの実態を表しており、
白と黒が融和して灰色になるなど、
線形予測不可能な数式だとしているのです。


ベン図

これらはベン図によって表されます。

イッシュ地方を全体集合として見た時、Nが示す論理条件は、
白点集合Wと黒点集合Bが二項対立する場合のみ成立します。

育ての親・ゲーチスが、Nを王に擁してプラズマ団を組織したのは、
両者が決して交わらぬように2つの円を切り離し、
ポケモン側の円を独占しようと企んだ為だったのですが、
Nの理想世界は、ゲーチスの野望と共に、
白黒が曖昧な主人公の存在に退けられます。


ブラックホワイト

Nの数式は積分が可能で、解が直線となるゆえに、
線の先に未来を予測できますが、
それに対する主人公は、論理条件にグレーゾーンを含み、
解が非線形となる不確定要素(揺らぎ)でした。

自然科学における数式では、
微小な誤差を無視して計算するのが一般的です。

ですが、万物は等しく揺れ動いているもの。
遠く離れた場所での蝶の羽ばたきが、
別の場所で竜巻を起こすほどに、未来は不確定なのです。

このような不確定要素を非線形の解で表し、
確率論として取り扱う理論を、カオス理論と言います。


ブラックホワイト2

非線形のカオスを含む主人公の考えが、
世界をより真実へと導く、と理解に至ったNは、
異なる考えを受け入れるようになり、
その2年後、ブラックホワイト2の主人公と協力して、
プラズマ団の残党と戦います。

イッシュ地方の世界観は、リュウラセンの塔に象徴されるように、
白と黒が螺旋を描きながらぐるぐる混ざり合い、
一種(イッシュ)となっていきます。

白と黒は二項対立が成立せず、
共存可能である事を二匹の竜は表現しています。

Nの計算をもってしても分離不可能だった
人間とポケモンの切っても切れない関係から、
ポケモンシリーズの共生のテーマが見えてくるのです。



ダーウィンの進化論は誤りだった 『X・Y』


XY

XYでは、フレア団のボス・フラダリに適者生存を、
対する主人公に相利共生を唱えさせ、
遺伝子進化論vs共生進化論の二項対立を軸としています。

 フラダリ
 世界は 有限なのに
 人も ポケモンも 増えすぎた

 金も エネルギーも
 奪ったものが 勝つ 世界だ

 争わず 奪いあわずに
 美しく 生きていくには
 命の 数を 減らすしかない



XY

XYはタイトル名が表す通り、
「遺伝子」と進化の関係がテーマです。

ダーウィンが『種の起源』で採用した進化のあらましを、
そのままフラダリの主張としています。

ダーウィンは、ガラパゴス諸島の調査結果から、
島固有の生物種に着目。

資源の不足と人口の抑制の関係を著した、
経済学者マルサスの『人口論』を生物学的にアレンジし、
環境に適応した個体が優先的に子孫を残してきたとする、
自然選択に基づく進化論を纏めました。

XY

フラダリはこの自然選択説に則り、
カロス地方の人々からお金とエネルギー資源を奪い、
奪い取った物をフレア団の下に集中させ、
生活資源の数を超過する人々やポケモンが、
弱い順から淘汰されていく優勝劣敗の世界に作り替えていきます。

フラダリの理念は人口を減らす事で、
生存競争を根源から無くそうとしているのです。


XY

これらの自然選択は、1つしかないメガリングを、
主人公とライバルが奪い合うシーンに強く反映されています。

ライバルに勝利しメガリングを手にした主人公こそが、
環境に適応した者=適者という事です。

フラダリの最終目標は適者のみの生存にあり、
カロスの王が最終兵器として製造した、
弱者の命をエネルギー源とする装置を使用し、
フラダリが選んだ強者だけに永遠の生を与えるというものでした。


ダーウィンは、進化のメカニズムまでは解明できませんでしたが、
ちょうど同じ頃に、エンドウ豆の実験で知られる
植物学者のメンデルが遺伝子を発見します。

ダーウィンの流れを組む研究者は、
優秀な遺伝子こそが突然変異を起こしうる進化の原動力であると、
メンデルの法則を進化論の論旨にも取り入れ、
遺伝子進化論へと発展していきます。

系統樹
系統樹(KEKより引用)

ところが、ダーウィンがヒントにした適者生存説は、
遺伝子研究が進むと根底から覆されます。

ダーウィン派は、進化系統樹と呼ばれる
樹のように枝分かれした図で適者生存の流れを説明しましたが、
遺伝子は個から個へと垂直伝播するだけでなく、
種から種へと水平伝播する事が確認されたのです。


細胞内共生

細胞内共生(東京大学より引用)

生物学者のマーギュリスは、原始の生物が
他の種からミトコンドリアや葉緑体などを体内に取り込み、
より高次の生命体へと進化したとする、細胞内共生説を提唱します。

細胞内共生は、適者生存説を真っ向から否定するもので、
地球上の動植物は、遺伝子の水平伝播により、
相利関係を築きながら生きてきた可能性を示しました。

マーギュリスは、細胞内共生こそが
進化の原動力であると結論付け、共生進化論と名付けます。

生存競争など、初めから存在しなかったのです。


XY

相利共生の理念は、アサメタウンの5人の子供達に反映されており、
ポケモンシリーズでの同郷出身者数として最多。
それぞれ違った長所が設定され、
5人で持ち寄った知識や経験を交換しながら、
カロス地方での旅が進んでいきます。

旅の最後には、5人の中で最もバトルが弱いサナに、
適者生存のフラダリの過ちを指摘させ、
生命に優劣が存在しない事を表現しています。


XYで描かれた遺伝子進化論と共生進化論の二項対立は、
フラダリや主人公らをはじめとする
人物描写に上手く落とし込まれており、
増田作品はここで完成の域に到達したと言えます。

マーギュリス女史はガイア理論の熱心な支持者であり、
増田ディレクターが表現したかった世界観が、
ルビーサファイアの頃から共通して、
生物圏の相互作用」にあった事が分かります。



未発売に終わった『Z』


プニちゃん

さて、大人の事情から発売に至らなかった、
幻のZバージョンについても、ここで触れておきます。

アニメ、ポケットモンスターXY&Zでは、
3体目の伝説枠・ジガルデのベースとなる、
「プニちゃん」というキャラクターが登場します。

Xでは樹木から、Yでは繭から伝説のポケモンが生まれますが、
プニちゃんは植物と動物の両方の性質を反映した、
光合成をする動物として、細胞内共生を表現しています。

このキャラを使って、カロス地方の生態系における
相利共生を描こうとしていたのは明らかで、
ジガルデ・セルが集めた遺伝情報をコアが統合し、
監視者の役割を果たそうする狙いがあったと思われます。

ジガルデがアローラ地方に出る事になったのは、
計算外だったのではないでしょうか。


いずれにせよ、ゲーム内で表現できなかった事を
アニメで表現した事で、アニポケの価値は上がりました。

グリーンフラッシュ

次作・サン&ムーンでも、グリーンフラッシュ現象を取り上げ、
太陽と月の相互関係に深みを与えるなど、
ゲームとアニメが連動した世界観を生み出すのに成功しています。


シリーズ共通となる共生のテーマは、
次の大森ディレクターにも受け継がれていきます。

果たしてこれが垂直伝播か水平伝播であるのかは、
また次回、解説していきましょう。




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