今回は、ポケモンシリーズ最新作である
サンムーン及びウルトラサンムーンを考察していきます。

サンムーン





リーリエのコペルニクス的転回 『サン・ムーン』


ルザミーネ

サンムーンは、ポケモンシリーズの転換点となった作品です。

本作から新たに大森滋さんがディレクターを務め、
ルビーサファイアから数えて14年ぶりの新体制となっています。

前任者の増田順一さんが手掛けたシリーズ作品では、
歴代ボスが各地方ごとに設定された世界観を台詞で説明し、
己のイデオロギーに巻き込む形で
主人公を二項対立のテーマに当てはめました。

大森さんは台詞でなく、人物描写からテーマを伝える手法を取っており、
本作のボスキャラであるルザミーネに家族を設定する事で、
世界観を説明する代わりとしました。


サンムーン

サンムーンでは、「地球」の視点から
太陽と月に象徴されるアローラ地方の世界観が描かれます。

エーテル財団代表・ルザミーネは利己的であり、
全てが自分を中心に回っています。

すなわち地動説です。

 ルザミーネ
 たとえ 自分の 子供でも!

 どれだけ わたくしを 慕っていても!

 珍しいとされる ポケモン だとしても!

 わたくしが 愛を 注げる
 美しい もので なければ
 ジャマでしか ないのです!

 そう! わたくしの 世界には
 わたくしの 望む ものだけで
 あふれていれば それで いいのです!



サンムーン

一方、二項対立の片軸となるのは
主人公ではなく、ルザミーネの娘・リーリエです。

リーリエは利他的であり、自分とその周囲の自由意志を尊重し、
より良い相互関係を築こうとします。

すなわち天動説です。

 リーリエ
 子供は……
 親の モノでは ありません!

 ポケモンも トレーナーが
 好きにしていい モノでは ありません

 わたしも 生きています!

 コスモッグも 生きています!

 モノでは ないのです


サンムーン

リーリエはエーテル財団に捕獲されていた
コスモッグを持ち出し、母の偏愛から共に逃れるのですが、

コスモッグ→コスモウムのポケモン図鑑の分類は、

  • コスモッグ
  •   せいうん(星雲)ポケモン 

  • コスモウム…コスモッグの進化形
  •   げんしせい(原始星)ポケモン

    となっており、

    それぞれを星間分子雲→原始星に準えている事が分かります。


    星雲

    引用:( JAXA|太陽の誕生

    原始星とは、星形成領域=通称「揺り籠」の中で眠る、
    恒星(太陽)の赤ちゃんの事です。

    コスモッグの進化の過程は、
    太陽系銀河が誕生するまでの流れを示しており、
    太陽、月、地球が相互に影響を及ぼし合う様子を、
    本作の伝説ポケモン・ソルガレオとルナアーラが受け持っています。
    例えば、月は地球に潮汐を発生させたり、
    地軸の傾きを安定させている事で知られていますよね。


    つまり、コスモッグ=天上の星々の取り扱いをめぐる
    ルザミーネとリーリエの二項対立は、

    自分=地球が中心か、天体が中心か、

    見方が異なる2つの視点を象徴的に表現しており、
    全ての母になると宣言し、コスモッグをも捕獲したルザミーネと、
    母から独立し、コスモッグと相互関係を築いたリーリエの親子関係から、
    天動説vs地動説のテーマが見えてきます。


    サンムーン

    特筆すべきは、ファンの間で「がんばリーリエ」と呼ばれるこの姿。

    ルザミーネは、親に従うのが子の幸せとして、
    親がコーディネートした服を、娘のリーリエに着せていました。

    エーテルパラダイスのイベントでも、
    主人公とハウに服を選んであげると言っており、
    子供に自分好みの服を着せてコレクションに加える、
    すなわち自分の世界の一部としてしまうのが、
    ルザミーネにとっての母の愛のようです。


    リーリエのコスチュームチェンジは、
    単に決意を一新した表れというだけでなく、
    天動説=母の世界から脱却したという意味であり、
    物の見方が改まる=コペルニクス的転回を表現しています。

    リーリエは周囲の人々と相互関係を築いた事で、
    母から与えられた服を脱ぎ捨てたのです。


    サンムーン

    引用:(任天堂|ディレクター・大森滋氏が語る、2つのソフトに込めた想いとは?


    ブラックホワイトのNや、XYのフラダリの理想とする世界は、
    ほぼ全てを台詞で説明しています。
    これに対し、ルザミーネの理想とする世界=天動説は、
    コスモッグの存在や、リーリエが着ている服がそれを説明しています。

    公式ページのインタビュー記事にも、
    見方を変えることで、回転の仕方が異なる」と書かれていますので、
    空論に過ぎなかった歴代ボスの主義主張に肉付けを行う、
    はっきりとした狙いがあったという事に他なりません。

    天動説vs地動説の二項対立のテーマは、
    大森さんが表現したいと述べていた、
    リーリエとコスモッグの相互関係に落とし込まれていて、
    増田さんの頃よりも表現が巧みになっている、

    と言えると思います。



    ネクロズマの大日如来システム 『ウルトラサン・ムーン』










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